ミチノクホタルイ（カヤツリグサ科）の南限産地およびミヤマホタルイからの識別形質

摘要

ミチノクホタルイSchoenoplectus orthorhizomatus （Kats. Arai ＆ Miyam.）Hayasaka ＆ H. Ohashiは北海道と本州北部（青森県，秋田県）に分布する日本固有種として1997年に記載された（Arai and Miyamoto 1997）．その後，本種は岩手県と山形県でも採集されている（Fig. 1，Specimens exa血ned参照）．2007年に細島と黒沢は曽原湖（福島県耶麻郡北塩原村，磐梯朝日国立公園内）とその周辺の維管束植物相を調査した（細島ほか　 未発表）．その過程で曽原湖にミチノクホタルイが自生することが分かった．曽原湖からの本種の記録は福島県における初記録であるとともに，曽原湖は本種の南限産地となる（Fig．1）．ミチノクホタルイは曽原湖の南東側に隣接する通称トンボ他の浮島状となった場所にヨシとともに数十株以上生えており，曽原湖東岸でもヨシの優占する湿地に数十株以上生えていた．なお，現在の曽原湖では，過去に養殖されて逃げ出したソウギョの影響で，常時冠水する場所には抽水植物を含めて水生植物がほとんど見られない．