果樹袋掛け栽培に想う

摘要

果実袋掛け栽培は高品質化を狙う栽培手法として現在，広く行われている。果樹研究者の中には，そこまでしなくても，との考えもあるが，労力に見合うメリットが幸替む。 最初，袋掛け栽培の略史をまとめてみると，『果樹園芸大事典』（1991）に志村は，果実袋掛けが明治10年台に岡山のモモで始められたらしいとしている。モモの項執筆の時本は，小山益太（益太郎の誤り）が1885（明治18）年に始めたとしている。 しかし，永澤（1953）は，モモが岡山で生産を強めたのは山内善男が三田育種場から1885（明治18）年に天津、上海の2品種を導入したが害虫被害が激しく，その対策として袋掛けを行うようになったとしている。同様に筑波（1983）は年代末記載ながら岡山県御津郡の山内善男が，ナシ栽培に着想を得てモモに袋掛けを行ったとしている。その後にリンゴの袋掛けを岸，三好（1972），鈴木（1973）が，岩手で中川良八がゾウムシ被害回避のため和紙の袋掛けを1891（明治24）年に始めたのが最初であるとしている。