タイの都市近郊農業地帯における農薬と物理的害虫防除法の併用

摘要

タイは国土の大部分が熱帯サバンナ気候帯に属し，一年が雨季（6～10月）と乾季（11～5月）に明瞭に分かれている。 雨の90％が雨季に降るが，それが雨季の終わりの9～10月に集中するため，水害が発生する反面，乾季の末期が暑李（3～5月）に一致するので，干害が恒常的に発生する。 したがって，天水依存型農業では雨季の湛水害と乾季の干害に交互に見舞われ，それが作物栽培上の最大の障害になっていた。 そこで，1950年代中ごろから濯漑施設が整備され，全農耕地の19％が潅漑地帯になった。とくに北部から中部を貫流するチャオプラヤ川下流域のバンコク周辺部には，濯漑水を利用したタイで最も集約的で大規模な生産地がいくつか形成された。 そこでは高畝方式による高度に集約化、専門化した軟弱野菜や花き，果樹（図－1）などの収益性の高い作物の栽培が行われている。