糖鎖関連医薬品の研究開発

摘要

最近十年間で糖鎖に関する医薬品開発に大きな関心が寄せられている。 その背景には次のような糖鎖に関わる研究の急速な進展があげられる。 （1）糖鎖の有機合成が確立してきたこと，（2）糖鎖合成酵素の遺伝子が次々とクローニングされてきたこと，（3）これらの研究の基礎となる糖鎖構造解析技術が著しい発展を遂げたこと，である。 糖鎖はその構造の多様性から，化学合成は極めて難しく，これまで医薬品としての対象からはやや外れた存在であった。 しかし，岐阜大学の長谷川，木曽を中心とするグループの精力的な糖脂質合成法の確立によって，糖鎖の持つ機能やその修飾体の生理活性の解析が急速に進んできた。 また最近では糖鎖のコンビナトリアルケミストリを試みる研究も進んでいる。 こうした背景から多くの医薬品メーカーがこの糖鎖医薬品の分野に進出の機会をうかがっている。 表1には糖鎖が関連する疾患を示した。