ウシ体外培養胚の生産と選択

摘要

体外受精卵移植による大量かつ低コストの優良子牛生産，核移植によるクローン家畜の作出，受精卵の性判別，遺伝子導入家畜の作出など畜産業の新技術の実用化には，体外培養系で高品質な受精卵（胚）を効率よく生産できることが鍵となっている。 牛体外受精卵（胚）の生産と移植の手順は園1に示す通りである。 屠畜された雌牛卵巣より卵子を回収，卵子の体外成熟培養，精子の受精能獲得，体外受精，胚の体外発生培養，移植可能胚の選択，胚の凍結保存，受卵牛への胚移植，などいくつかの行程より成り立っている。 卵子の体外成熟培養や体外胚培養には，通常動物血清（ウシの場合は一般的に胎児牛や仔牛血清を使用）を基礎培地に5％、20％程度添加した培地として用いている。 培地に血清を添加する利点として，卵子成熟や胚発生を促進する栄養素や生理活性ペプチドの供給，抗酸化物質によるフリーラジカルなどの消去，培地中のpHや浸透圧の調整など，が考えられる。