肉用牛における栄養生理研究の最新の進歩

摘要

脂肪交雑は筋肉内に含まれる白色脂肪組織量によって決まる。 脂肪組織の増加は脂肪細胞の体積と数の増加に起因する。 脂肪細胞体積の増加は，中性脂肪の合成，貯蔵による細胞質内脂肪滴の増大により生じる。 ラットやメンヨウの脂肪細胞をコラーゲンゲル内で三次元培養すると，細胞分裂が生じることが生じることが報告されているが，この様な現象が生体内で生じていることは確認されていないため，一般的に，脂肪細胞数の増加は脂肪前駆細胞の増殖ならびに脂肪細胞への分化促進により生じると考えられる。 Cianzioらは13カ月齢から19カ月齢にかけて最長筋内の脂肪細胞数が増加すること，最長筋内の脂肪細胞数と脂肪交雑は高い相関関係を有することを報告している。Mayらは黒毛和種交雑牛の筋肉内脂肪組織に存在する脂肪細胞径はアンガス種と比較し小さいことを報告しており，この結果は黒毛和種交雑牛の筋肉内では脂肪細胞数が増加しやすいことを示唆している。 これら報告は脂肪交雑形成には脂肪細胞分化が大きく関与していることを示しそおり，ウシ脂肪細胞分化調節機構解明の研究がいくつかのグループにより行われるようになった。 Asoら5）はウシ筋肉内脂肪細織から単離した脂肪前駆細胞様細胞の継代系樹立に成功し，特に細胞外基質と分化の関係を精力的に行ってきた。