植物画法黎明期の追跡:加藤竹斎扁額から

摘要

筆者は，本誌でかって二度にわたり，一度は世界から忘れ去られていた加藤竹斎制作の「扁額」の発見と その経緯の概要の紹介をおこなった1)2)。この扁額は，植物の材から作った板をキャンバスとして，その 上に植物画を描き，四辺は樹皮つきの枝で囲い，四隅は枝の横断面という大変ユニークなものであった。図1(a)には，最初に目にすることになつたイチヨウの扁額を掲げる。この2回の紹介で扁額についての 話題はほぼ出尽くしたのではないかと思っていたが，その後さらに展開があった。また，この話題はこ れまでほとんど知られていなかつたので，その背景の追跡は意義ありと考えるようになった。この追跡 で，日本において植物画法が明治初期にどのようにして成立していったかの一つのケーススタディがで きることに気づいた。そこで，それらの背景について追及するとともに，その内容を話題として提供する。