「工事で損なった農地の年貢は引き受ける。高瀬川の水 を農業用水として用いても異議はない。不要になった時 はもとの田地に戻す」（角倉了以、京都府）

摘要

河川の役割は治水と利水にある。明治期まで は、主に物資や人びとを運ぶ場合は水運が大いに 利用された。河川の運航は、岩や狭窄部によつ て、なかなかスムーズにはいかなかったが、京都 の豪商であった角倉了以は、河川土木事業にも才 能を発揮し、嵯峨の大堰川通船工事、京都の経済 上の動脈となった高瀬川、そして富士川等を開削 し、船を通し、物資の流通を図った。商人として 通船がもたらす利益が目的であったという力、そ の根底には、今日でいう企業の社会的責任を貫い ていたといえる。