有孔虫と微細藻の共生系—共生系を成立、崩壊させる環境要因

摘要

熱帯亜熱帯に広がる透明度が高い サンゴ礁海域では，貧栄養な状態にも かかわらず複雑な食物網や棲み込み構 造により多種多様な生物が生息する。 単細胞生物の有孔虫も同様に種多様 性が高く ，特定のサンゴ礁海域だけでも200種以上力5確認されている。一般 的な有孔虫（成体）は直径1mm以下 と小さいが，サンゴ礁海域に生息する有孔虫では1mmを超える種が多く， 数cmに達する種もいる。これらの大 きな有孔虫は"大型有孔虫"と区別し て呼ばれる。「大型有孔虫がなぜ大き くなるのか？」という問いに対して， 「微細藻と共生しているため」と一般 的には考えられている。サンゴ礁海域では，サンゴゃシヤコ ガイと渦鞭毛藻（褐虫藻）との共生系 が有名である。有孔虫の場合は，渦鞭 毛藻だけでなく，緑藻，珪藻，紅藻な どさまざまな分類群の微細藻類と細胞 内共生する。この共生関係は有孔虫の 分類群によって決まっており，Alveo-linidae科，Amphisteginidae科， Calcarinidae科，Nummulitidae科の 有孔虫は珪藻（羽状目）と，Pener-oplidae科は紅藻と，Archaiasinae亜 科は緑藻と，Soritinae亜科は渦鞭毛 藻と，それぞれ共生する（図1，図2)。