タンパク質のリボンモデルの作成ご活用

摘要

分子生物学の進展に伴い，高校生物においても，生体分子を理解することが不可欠になった．しかし，化学を不得意とする生徒は多いため，化学式を使って分子を示すことは難しい．そこで筆者は，発泡スチロール球を使った分子モデルを教室に持ち込み，分子を示してきた1）．しかし，この方法でタンパク質のような分子量の大きなモデルを作ることは不可能に近い．教材業者からは，リゾチームなどの分子モデルが市販されているが，非常に高価（約50万円）であるため購入は困難である．たとえ購入できたとしても，このような精細な模型を高校生に示したところで，分子の立体構造を理解しやすくするとは思えない．こういった状況にあるため，分子量が大きく，複雑な構造をもつ生体分子の模型を授業で使うことはできなかった．いっぽう，インターネットを使って，生体高分子の情報（PDBファイルなど）と分子モデリングソフト（RasMolなど）をダウンロードして，コンピュータ上に仮想分子模型を作ることができるようになった2）．そこで，これら本物の分子モデルを手にしたとき以上に，立体構造を把握させることができたとは思えなかった．できれば，本物の分子モデルを使って，タンパク質の立体構造を示したいところである．ところが，仮想分子モデルを作成していて，このモデルは分子に関する詳細な多くの情報を与えてくれることを知った．たとえば，アミノ酸配列，各アミノ酸の位置，αらせんの位置，β構造の位置，－SS一括合の位置と長さ，任意のアミノ酸間の距離，任意の三つのアミノ酸が作る角の角度など，Ras－Molを利用して簡単に求めることができた．そこで，これらの情報を使って，これまで不可能と考えられてきたタンパク質の分子モデルを作成し，授業で活用する方法を検討した．