黒毛和種肥育牛における脂肪融点、脂肪酸組成および格付形質問の遺伝的関係

摘要

現在、枝肉形質の中でも脂肪の量を表す牛脂肪交雑基準（以下：BMS）ナンバーが、黒毛和種枝肉の市場価格の最も大きな決定要因となっている。 このことから、黒毛和種の肉質改良の指標には主にBMSナンバーが用いられており、BMSナンバーによる肉質の遺伝的な改良は急速に進んできた。 しかし、BMSナン六－だけに偏った改良は、特定種雄牛に集中した供用を招き、黒毛和種集団において全国的な近交度の上昇や有効な集団の大きさの縮小を引き起こしている。 集団の有効な大きさの縮小は、近交退化や改良量の低下を招くだけでなく、遺伝的不良形質の発現や個体の適応能力の低下を招き、改良はもちろん、将来的に品種の存続にも関わる重要な問題である。 このように、遺伝的多様性の低下が懸念されていることから、BMSナンバーだけに依存しない新たな肉質改良の指標の開発および評価が求められてきている。