高密度SNPアレイを用いた口之島野生化牛の遺伝的多様性評価

摘要

わが国では、肉専用種として黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種の和牛4品種、 乳専用種としてホルスタインが主に飼育されて レ、る。この他に、西洋品種からの遺伝子移入 を受けていない純粋な日本在来種として、口之 島野生化牛と見島牛が存在する。口之島野生化牛は、鹿児島県南西部のトカ ラ列島に位置する口之島に野生状態で生息し ている。口之島野生化牛は、日本在来牛が 古来保持していた形質を有する可能性（西中 川1991)、生理学的利用（印牧2014)、他 品種の遺伝的多様性を維持するための遺伝資 源（斯琴図雅ら2014)、野生状態で小集団を 維持、管理するモデルケースなど、多くの活用 法が示唆されている。近年になって、一塩基多型（SNP)力5'DNA マーカ一として注目を浴びるようになり、特に高 密度SNPアレイを代表とするハイスループットな 解析が可能となったことから、様々な遺伝解析 に用いられるようになった。そこで我々は、高 密度SNPアレイを用い、口之島野生化牛の遺 伝的多様性や遺伝的構造ついて評価を行って きた（斉藤ら、2016)。本研究レポートでは、 その研究結果についてとりまとめ、概説する。