ホルスタイン種体内成熟卵子と 性選別精子による効率的な 雌体外受精胚生産法の開発

摘要

計画的な後継牛生産において、繁殖成績の 向上は欠かせない。近年、精子の選別技術が 進展し、性選別された凍結精子のストローが販 売されるようになった。特に酪農家では、後継 牛生産のために雌選別精子が人工授精に用い られることが一般的になり、多排卵処理と組み 合わせて体内受精胚生産にも利用されている。 しかし、性選別精子は、選別されていない通 常精子に比べ、凍結ストロー 1本あたりの精子 数が少なく、価格が高価である。また、性選別精子は、選別過程における精子のDNAへのダ メージにより、生存性の低下や生存時間の短さ が指摘されている。これらのこと力ゝら、人工授 精における受胎率が、特に経産牛（泌乳牛）で は、低いことが世界的に知られている。多排卵 処置、人工授精、子宮還流による体内受精胚の生産では、通常精子を用いた場合において も、供胚牛の栄養状態（泌乳の有無やステージ、 泌乳時のエネルギーバランス）、卵管、子宮等 の生殖器環境、季節、ホルモンへの反応性等 の影響により、生産胚数が少ないことや正常胚 が得られないことが知られている。さらに、上記 のような要因が影響し、性選別精子を用いた多 排卵処置における雌胚生産においては、未受 精卵の回収率が高いことなどにより、正常胚数 は少なく （1頭あたり平均0.58-1.1個/回)11'21、胚移植後の受胎率を考慮すると、1回の処置で 1頭の後継牛を生産することが難しい。