褐毛和種去勢牛の産肉性に及ぼすビタミンAの影響

摘要

褐毛和種去勢牛へのビタミンAの給与が、肥育期間中の増体重、肉質へどのような影響を与えるのか、また、ビタミンA欠乏による筋間水腫等の発生との関連について試験（A区：肥育前期間ビタミンA給与、B区：肥育全期間ビタミンA無給与、ビタミンA欠乏の臨床症状が認められてもビタミンAの給与はしない）を行い次の結果が得られた。 1）増体重は肥育前期でA区1．．30kg、B区1．18kgとA区の増体が優れていた。 後期ではA区0．．83kg、B区0日67kgとA区の増体が有意に優れていた。 また、飼料摂取量もビタミンA投与のA区が高く、1kg増体当たり飼料要求量もA区の隙取量が低く効率の良い増体を示した。 2）血中ビタミン濃度は、両区ともに素牛導入後約1，6カ月位は正常値（50IU／dl）を上回っていたが、ビタミンA給与のA区は、その後も正常値を大きく上回り、試験開始後約7カ月をピークに以後暫滅したものの屠殺前でも100IU／dlと正常値を越えて推移した。 B区は試験開始後から徐々に低下し、試験開始後約3カ月で正常値50IU／dlとなり、約5カ月後欠乏値33IU／dlを示した。 その後、欠乏値近くを維持しながら推移した。 また、欠乏値を示した約2カ月後からビタミンA欠乏症状（9頭中6頭）が現れ、同区の1頭は起立不能となり屠殺したが全身筋間水腫であった。 しかし、血中ビタミンA濃度が欠乏値を下回り推移した供試牛がいたにもかかわらず、ビタミンA欠乏症状は外見からは伺えず、発症には個体差があるものと考えられる。 3）脂肪交雑（BMS．NO）は、A区3．2±0．8、B区5．5±2．8で、B区が有意でないものの2段階の差があり優れていた。 4）格付成績は、A区：B3、3頭、A2、1東、B2、1頭、B区：A5、2頭、B5、1頭、A4、1頭、B3、3頭、B2、2頭であり、血中ビタミンA濃度の低いB区が優れていた。 しかし、全身筋間水腫1頭、部分筋間水腫1頭が認められ肥育全期間のビタミンAの無給与は危険性を伴った。