最近の牧野組合の入会的利用の動向と経営再建(1） -「市民パートナーシップ入会権」論の検討-

摘要

1960年代以降，山村の人口の過疎化とそれによる 社会としての崩壊が社会問題として取り上げられ てから久しい。本論文では山村の再建を担う重要な 主体の一つとして牧野組合を考察し，とくに集落共 同体の基盤である慣行入会権が崩壊している状態 のなかで，いかに新たな経営体として改革され再生 出来るかを実態分析を通して論じることにする。戦後の高度経済成長へ移行する段階で，近藤康男 らは編著（1959) 「牧野の研究」注で，食糧増産の ために牧野の農地開発と拡大造林事業による植林化 が集落の牧野利用を圧縮していること，また，畜産経済の低収益性によつて慣行的入会牧野利用が解体 過程にあるとすでに指摘していた。林間放牧や採草 放牧原野での火入れ管理、過放牧規制，放牧期間の 規制などの共同体的規則が弱体化し，牧野の，化と 奥山など劣等地への移動を伴って，入会牧野は共同 管理=共同利用かち共同管理=分割利用に進んで いると把握していた。そして完全な個別分割へ進む ような場合，実質的な入会の崩壊過程がみられると 指摘した。