クロマグロ産卵群の漁獲状況

摘要

毎年，4月の下旬から6月はじめかけて八重山周辺海域にはクロマグロの親魚が産卵のために回遊してくる。 地元では八重山牛のように黒くて大きいため‘ウシ’と呼ばれている。 この産卵群を対象にマグロ延縄漁業が行ゎれている。 主な漁場は図1に示すように，石垣島の南東沖，西表島の北沖，それに宮古島の南西沖である。 八重山漁協所属の延縄船は12隻で，すべて20トン未満である。航海日数は約1週間だが，魚倉が満杯になった場合は数日で帰港する。漁獲されたクロマグロはすべて水氷で保存されている。水揚げは朝9時頃で延縄船は前日の夕方か当日の早朝に入港する。 例年の水揚げ尾数は50～60本程度であるが，昨年から漁獲尾数は増加しており，昨年の実績は260本程度，今年は昨年を大幅に上回り320～330本もの水揚げがあった。 これとは逆に体長は小型化しており，昨年の平均体重が190kg程度，今年は170kg層度である。300kg前後の大型魚は一昨年までは時々漁獲されていたが，昨年からは数える程度しか漁獲されていない。 また，例年だと6月に入ると漁獲はほとんど無くなるが，今年は，6月いっぱい漁獲があった。 さらに，一昨年まではスポンジ状の肉質のクロマグロが，多い時で半数を占めていたが，昨年は数例のみ，今年は全く認められなかった。 漁協ではスポンジ状の肉は産卵後のものではないかと考えている。 朝9時頃に水揚げされたクロマグロは生殖巣を取り除かれ，尾の部分を切り離された後，ビニール袋に詰めた氷と共に段ボールに梱包され，東京，熊本，京都などに空輸される。 漁獲されたときに死んでいたもの等，状態の悪いものは地元でセリにかけられる。 今年の最高値はキロ8700円，最低は800円，平均だと1300～1500円程度である。