新放牧方式“牧草一桑混生草地への換金作物の導入”

摘要

筆者は，本誌53巻第7～9号および55巻第11～12号で桑を牧草地に導入し，牛の飼料として利用する牧草－桑混生草地の放牧について紹介した。 この放牧法は，牧草地に放牧しつつ，その牧草地に列状に植栽（樹列間4～5m，株間0．6～0．7m）された桑樹列を電気牧柵で囲い，牧草の生育が停滞する夏期～秋期にかけ，電牧線を外し，桑を放牧する方法である。 その混生放牧草地の特徴は，通常の放牧草地に牛を放牧することに加え，その草地に桑を植栽してある分だけ，牛の採食可能となる飼料が増えることになる（厳密にいえば，桑の遮光による牧草生産の減，また，桑と牧草の競争による牧草生産の減がある）。 実際の畜産草地研究所の試験では，放牧草地に桑を草地全体の20％植栽し，8月と10月に桑を採食させた輪換放牧の結果，通常の輪換放牧草地に比べ，放牧期間を約1ヶ月延長することができ，牧養力もその分だけ増加した。 このように，この放牧法は，従来の放牧草地が抱える最大の問題点，季節生産性のアンバランスを解消する切り札となり得ること，放牧期間を延長でき牧毒力が増加することなどが可能となる。