生物農薬と化学農薬の多様な組み合わせ－リンゴ園における効率的な害虫管理を目指して－

摘要

化学農薬の過度の使用は，食品残留，土壌残留，河川や地下水への流入，農薬の直接的な被曝事故，人を含む野生動植物全体（食物連鎖）に及ぶ悪影響が懸念されてきた．これらのリスクは，過去に使用された化学農薬を含め，詳細な研究評価が必要であろう．生産現場で直面している問題は，安易な農薬の使用が耐性菌や抵抗性系統害虫の出現，天敵相の破壊，誘導多発生（リサージュンス現象）を引き起こし，農薬開発と病害虫との「いたちごっこ」が練りかえされている点にある．果樹の生産現場では特にハダニ類の防除に苦慮しており，これは化学農薬の弊害として最も顕著な事例と言えよう．生産現場では，こうした化学農薬の弊害を緩和するため，化学農薬一辺倒の体系を見直す動きがある．