菱刈鉱山·採鉱切羽における充填の支保効果

摘要

採掘空洞の大型化は空洞の安定性を損なう恐れがある。 採掘空洞を充填することによって空洞の安定性は改善されるが，その支保効果は把握されておらず，菱刈鉱山のBS法を対象として充填の支保効果について検証した。 岩盤の非弾性挙動を考慮した3次元解析が望ましいが，計算時間が長くなるので，2次元の弾塑性解析によって，充填の支保効果を実用的に評価することにした。2次元解析モデルに3次元性を持たせるために，3次元弾性解析により，StopeEndの支保効果を明らかにし，StopeEndの支保効果に相当する内圧を，2次元解析モデルの壁面に与えた。 また，充填の支保効果も2次元解析モデルでは，内圧の形で，すなわち，充填物が採掘壁面に作用させる支保圧として，考慮される。 そのため，菱刈鉱山で実際に行われているBS法を再現した採掘一充填モデルを作成し，3次元弾性解析を行い，充填の支保圧（支保反力曲線）を評価する方法を示した。その結見無充填区間が長くなると充填の支保効果が発揮される時期が遅くなり，最終的につりあう内圧は小さくなることなどがわかった。 モルタルを含んだ充填材の一軸圧縮試験を実施したところ，充填材の剛性は，圧縮応力がある程度大きくなると，増加することがわかった。 菱刈鉱山KE－3のBS法について岩盤変位測定と数値解析の比較検討を行った結果，KE－3で使用した充填材のヤング率は，充填直後10MPaだったのが圧密によって1GPaに増加すると考えると，現場計測の結果に矛盾しないことがわかった。 本研究ではKE－3のBS法を対象としたが，菱刈鉱山の採鉱切羽における起砕幅は，鉱脈の脈幅·脈質に応じて異なる。 今後は，現場計測と本報で提案した数値解析を利用して，より合理的な充填材の配合（バインダー比）を決定できるものと考えている。