甲状腺 - 副腎 - 性腺の機能的関連性に関する内分泌学的研究

摘要

本研究では、甲状腺 - 副 I - 性腺の C能的関連性を明らかにすることを目的として、チオウラシル投与により実験的に甲状腺機能低下症を作出し、甲状腺機能低下時における視床下部 - 下垂体 - 副 I軸および視床下部 - 下垂体 - 性腺 Sの機能について詳細な検討を行った。 1. 甲状腺と副腎の機能的関連性: 甲状腺機能が低下した成熟雄ラットでは、副腎重量が有意に低下し、コルチコステロン分泌反応も対照群に比べて低下したが、ACTH、CRHおよびAVP分泌の亢進が認められ、甲状腺機能が低下した成熟雄ラットでは、副腎皮質械能が原発的に低下し、視床下部ではCRHおよびAVPの分泌が亢進する可能性が示唆された。 2. 甲状腺と性腺の機能的関連性: 甲状腺機能が低下した成熟雄ラットでは、下垂体のLH分泌反応および交尾行動の低下が認められたが、精巣機能には影響は認められなかった。 以上の結果から、甲状腺機能が低下した際に認められた性腺機能の抑制は、視床下部レベルの障害に帰因するものと推察された。また、成熟雌ラットではチオウラシル投与により、エストラジオール分泌の低下、プロラクテン(PRL)およびプロジエステロン分泌の亢進が認められた。 甲状腺機能の低下にょりドパミン合成系に影響は認められなかったが、血管作動性腸管ペプチド(VIP)の下垂体中含有量が有意に上昇した。 これらの結果は、甲状腺機能が低下した成熟雌ラットでは、下垂体中のVIP含有量が上昇し、このVIPがテクトトロフに作用してPRL分泌を上昇させるものと推察された。 甲状腺機能の低下した雌ラットで認められる生殖機能障害の一部は高PRL血症によるものであり、下垂体中VIP含有量の上昇がPRL分泌を上昇させることが示唆された。