清国防護巡洋艦「致遠」

摘要

1870年代半ばから清国北洋出師はイギリスやドイツから有力な戦闘艦を導入し，近代海軍の整備に努めていた。致遠は英アームストロング社エルジック造船所で建造した致遠級防護巡洋艦2隻のネームシップで，1887年7月23日竣工した。いわゆるエルジック•クルーザーだが，主砲は独クルップ式であった。完成要目は常備排水量2,300トン，垂線間長76.2メートル，主機レシプロ2基，2軸，出力6,850馬力，速力18ノット。兵装は20.9センチ連装砲1基，同単装砲1基，15.2センチ単装砲2基，57ミリ単装砲8基，45センチ単装魚雷発射管4基(固定式，旋回式各2基)である。写真は本国回航前イギリスにおける姿。主砲は前部が連装，後部が単装である。本艦は1891年と翌92年に来日したことがあり，94年9月17日，日清戦争の黄海海戦で戦没している。同海戦では戦意に劣る清国艦隊にあって，艦長の鄧世昌は勇戦敢闘し，艦と運命をともにした。乗員252名中，生存者はわずか7名だったという。2015年，黄海北部の海底で本艦の残骸が発見されたとの中国側報道は記憶に新しいところだ。