日本海軍の軍艦開発プロセス: 「大和」型戦艦を例にとって

摘要

国防のために整備する軍備は，戦うべき敵国を仮定して進めないかぎり，現実的なものにならない。第1次大戦によって5大強国の一つにのしあがった日本の海軍は，日本を恐るべき存在と意識しはじめたアメリカの動きに呼応して，そのアメリカを太平洋でせめぎあう仮想敵国と想定した。アメリカと雌雄を決する際の作戦計画や軍備計画の大綱を策定するのは，軍を統帥する天皇のスタッフとして用兵面をとりしきる軍令部の所掌とされていた。その策定作業を左右する絶対国力となると，日本のそれは，アメリカに遠く及ばぬレベルにあるといわざるをえない。