動揺する米国の対アジアビジネス: 米中新冷戦とCPTTP， RCEP対応

摘要

2021年1月20日に発足したバイデン政権は「才バマ2.0」とも称される。(1)通商政策は外交政策に組み込まれる，(2)政策立案プロセスの復活，(3)同盟国などとの連携強化など，バイデン政権の対アジア通商政策はプロセス面で4年前に戻る。一方，(1)コロナ危機からの復興優先，(2)中国の脅威拡大，(3)アジア太平洋の経済統合の波に乗り遅れた米国といった3点の試練により，バイデン政権の対アジア通商政策の中身は大幅に変わり「才バマ2.0」とは言えない部分もある。トランプ政権のTPP離脱は米国経済史上，最大の過ちと歴史に刻まれるかもしれない。米国はアジア太平洋地域でジレンマに陥っている。バイデン政権は内政の事情によって，CPTPPなど新規FTAへの早期参加は難しい。だが，中国が地域経済統合への関与を深める中，米国企業にとってビジネス環境は悪化しかねない。ベストシナリオは，CPTPPとの部分的な協定の締結で米国が域内統合に参画することで辛うじて中国参加を牽制することかもしれない。