EU政治の主戦場としての 2019年欧州議会選挙: Brexit, Spitzenkandidaten,反EUナショナリズム

摘要

欧州統合とEUについては，2015年をピークとする百万単位での中東からの移民難民の流入をみた。これ を激しく攻撃する右派ナショナリス卜勢力を増大させ，既存政党はその支持基盤を脅かされている。これに EUからのイギリス離脱の動きが加わり，ヨーロッパ統合は不透明さを増している。これが故にわが国では欧 州統合終焉論,EU解体論が根強い。他方，「危機は統合を進める」というブラン卜西独首相の至言にあるご とく. EUでは欧州議会の権限は確実に強化され，統治構造は強化されている。 特に，EUにおける統治構造では.リスボン条約により欧州委員長の選出に係る欧州理事会と欧州議会の権 力関係は歴史的逆転をみた。欧州政党による欧州委員長選出の予備選挙Spitzenkandidaten2では.反EU 勢力までその過程に参加して，これは憲法的慣行となる可能性を秘めている。5月の欧州議会選挙について は，全体として，今後欧州議会では右派ナショナリス卜勢力は続伸するが，同時に親EU派の欧州自民,緑の 党なども伸びる見通しである。明確なことは多党化がさらに進むこと,欧州議会は，加盟国間の東西，南北の 経済格差および人権，移民，差別などEUの価値をめぐる主戦場としての性格をさらに強くするといえる。全 体として欧州議会の党派性化は必至で，安直なEU解体論や統合終焉論をー蹴するように，EUは欧州議会で の政党政治の全面的展開という新段階に入る。