ニューラルネットワークを用いた木質材料のデータ解析

摘要

木材の利用拡大や木材産業の活性化に向けて，古くから様々な木材試験が行われてきた。現在では大量の試験データが蓄積され，木材に関する多くの現象が解明されている。しかしながら，未解決の課題は未だ存在し，その中で筆者が注目しているのが，木材の「複雑さ」である。生物材料である木材にみられる現象の多くは，複数の要因が複雑に絡み合って生じる。たとえば，木材の強度は樹種，寸法，密度，含水率，木取り，ヤング率，節の位置などの様々な要因が重畳して発現している。このような木材の「複雑さ」を排除するため，ある特定の要因のみを変化させて試験を実施し，個別の要因ごとにその影響を評価するというのが，通常の木材試験におけるアプローチである。しかし，実際に木材を加工•利用する場面では，多くの要因を一定に制御することは難しく，木材の「複雑さ」に向き合わなければならないといった事情がある。したがって，木材の加エや利用における現象を解明するためには，多くの要因を含む試験データを総合的に評価するアプローチが必要であろう。