火山灰凝集材による濁水の凝集特性

摘要

本研究では，難沈降性粒子を大量に含むダム貯水池に堆積した土砂を用いて濁水を作成し，火山灰凝集材を用いた凝集沈殿法における処理特性に関する基礎的検討を行なった。火山灰凝集材の最適注入率は原水濁度に依存し，注入率を100〜750mg/lの範囲で適切に設定すれば，濁度が1,000〜5,000度の超高濁度の濁水に対しても，処理水濁度は2度(カオリン)以下となった。火山灰凝集材の凝集作用は，pH条件によって大きく影響を受け，中性付近から酸性(pH7.5〜pH3)の広い領域においてきわめて良好に凝集した。ただし，アルカリ性領域では凝集しなかった。これに対して，ポリ塩化アルミニウムの適切な凝集pH条件は，中性付近からアルカリ性の領域であった。このことから，火山灰凝集材の凝集pH条件は，アルミニウム系凝集剤とはまったく異なることがわかった。火山灰凝集材は，注入率を最大で3,000mg/lまで増加しても処理水のpH低下は0.2程度であり，原水のpHとほとんど変化しないため，原水が中性付近から酸性領域であれば，注入率を変量するのみで最適な処理条件が設定できる。しかしながら，火山灰凝集材は，電気伝導度の高い原水に対して最適注入率が高くなり，硫酸イオンと共存すると著しく凝集が阻害された。また，有機汚濁濃度の高い下水中では凝集しなかった。以上のことから，火山灰凝集材は，電気伝導度が低く，人為的汚濁負荷の少ない河川の上•中流域の改修•保全事業の現場で発生する濁水の凝集処理にきわめて有効である。