火山灰土凝集剤の凝集・分散特性と貯水池濁水処理への適用

摘要

我が国ではこれまでにストックされた多くの貯水池を時代のニーズに合わせて再生する取り組みが活発となっており，国土交通省においてもダム再生技術のPRと海外展開を推進している1)．既設ダムの再開発あるいは放流設備の増設などの改造工事を施工するには，貯水位を低下させる操作が行われるが，貯水池の末端部では流入水が堆積土砂を巻き上げ，貯水池が懸濁化することが懸念される．一方，貯水池の堆砂，ダム下流の河床材料の粗粒化が課題となっている流域においては，水系単位で土砂の移動を適切に管理する取り組みが始められているが2)，貯水池に堆積した土砂を湖内で移動する際にも，懸濁化への対応が求められる．貯水池の懸濁化対策としては，流入河川の流路を固定して堆積土砂の巻き上げを抑制する方法，濁水フェンスを設置して濁質の流動を制御する方法，選択取水設備を運用して貯水池の表層部から下流に放流する方法などが挙げられるが，貯水池全体が懸濁化した場合には，取り得る対策が限られるのが現状である．貯水池の懸濁化への対応として凝集剤を用いた土粒子の強制沈降が考えられるが，一般に用いられる人工の合成材料では，貯水池底泥として長期滞留後の貯水池の水質に与える影響が不明である．また，沈降した凝集フロックを別途処理する必要も生じることから，運用実績はほとhど見あたらない．