環境DNAを用いた水域生態系の解明に向けた取組み

摘要

環境DNA分析手法は，湖沼や河川などの現場で，わずか1Z程度の水を汲みとり，生物 から剥がれ落ちた皮膚片等に由来するDN A断片（環境DNA)の情報を分析することで，対 象の生物種の生息状況の推定を行なう。現在までに，多種多様な生物種を対象にした環境 DNA研究が展開されており,環境DNAの検出から対象種の在不在を推定するのみでなく ， 環境DNAの濃度から対象種の生物量を推定する研究まで，幅広く取組まれている。そこで本論文では，環境DNAの有無や濃度に着目して，湖沼等の止水環境におけるコ ィゃブルーギル，渓流等の流水環境に生息するアマミィシカヮガエルの幼生などを対象に， 筆者らの初期の研究から直近の研究に関する成果を中心に紹介した。さらに，環境DNA 研究の新たな試みとして，重要水産資源の二枚貝ャマトシジミの資源量調査に向けた取組 みについても紹介した。