無酸素Pd/Tiを利用した非蒸発型ゲッターコーティング，非蒸発型ゲッターポンプの開発と放射光施設への応用の展望

摘要

次世代放射光施設では，高品質の放射光を低コストで安定してユーザーに供給するために，ビームタイム期間中の振動と騒音の発生防止と，建設，運転，メンテナンスのコストとマンパワーの削減が求められる。我々はこうした要求に応えられる新しい真空技術として，無酸素Pd/Tiを利用した非蒸発型ゲッターコーティングと非蒸発型ゲッターボンプを開発した。無酸素Pd/Tiをコートした真空容器は，133〜176℃で3〜12時間べーキングしたあと室温に戻すとH_2とCOを排気する，大気導入とベーキングを繰り返してもH_2とCOに対する排気速度が低下しない，CH_4などの脱ガスを低減できるといった特長を持つ。また，無酸素Pd/Tiを利用した非蒸発型ゲッターポンプを放射光源，ビームライン，エンドステーションに採用すれば，従来のイオンポンプ，ZrVFeを利用したNEGポンプの台数を減らせるので，建設コストを大幅に削減できる。また，短時問べーキングで炭化水素の少ない超高真空を実現できるので，光学素子の炭素汚染を低減でき，メンテナンスに要するコストとマンバワーを削減できる。