鉄鋼材料の組織制御に基づく油潤滑下における低摩擦係数化•高摩擦係数化

摘要

湿式めつき処理における被めつき面への金属イオン•原子の吸着は，めっき皮膜の密着性•形成を大きく左右する。著者らは.最近の研究において，鉄鋼材料の組織制御により油潤滑下における摩擦係数μを低μ化•高μ化できることを明らかにした。これは，組織微細化に伴う結晶粒界などの格子欠陥導入により結晶性が低下して原子変位の自由度が増すことで，潤滑油•添加剤分子の鉄鋼材料表面への吸着の促進が起源と考えられる。この観点から，湿式めつきの前処理として被めつき面の組織を微細化させることや転位密度を増加させることによって，めっきに用いる水溶液に含まれる無機•有機配位子や界面活性剤などとの相互作用を制御し.密着性に優れためつき皮膜の形成，光沢などの表面外観の調整，微細部分のつきまわり性の向上などの効果が期待できる。