におい分析を通じて感じる人の多様性

摘要

私は2002年に新入社員として入社し，それ以来におい·VOCの分析，解析業務に携わってきました.入社するまで，においというものに人並み以上の舆味を持ったことの無かった人間ですが，付き合うほどに，不思議さや奥深さを感じています.においを感知する化学感覚器官である嗅覚は，多くの人にとって生まれてからずっと身近な存在です.他の感覚器官が発達したヒトでは，嗅覚から得られる情報が選択の決定打になることは少ないかもしれませんが，「甘いにおいがして，おいしそう！」，「焦げ臭い，火事ではないか」など，生活を豊かにしてくれるヒントや警告を感知してくれます.普段は，そんな嗅覚で感知されるにおいについて，においの質や好き嫌いの感じ方を，他の人と比べることは少ないと思いますが，官能評価を行うと，強さや快·不快度など，多様な面からにおいの感じ方を客観的に把握することができます.この官能評価を様々なにおいで実施してきて面白く感じているのは，例えば香料原料となる単成分のにおいを嗅いだ場合であっても，誰もが快と感じたり，不快と感じるにおいばかりではなく，快と感じる人もいれば不快と感じる人もいるということが多いことです（買ったばかりの自動車のにおいに対しては，年配の方ほど好ましく感じる方の比率が多い気がします）.