JIS A 6204コンクリート用化学混和剤の変遷: 平成における各種混和剤の技術進歩

摘要

化学混和剤は1930年代にアメリカでAE剤が発見されたのが始まりとされる。日本への導入は1948年頃でありダム工事に使用された。1950年頃にはリグニンスルホン酸塩を主成分とする減水剤やAE減水剤が開発され，広く使用されるようになった。1960年代にはナフタレンスルホン酸塩やメラミンスルホン酸塩を主成分とする高性能減水剤が発明されPCパイルやコンクリート製品等に使用された。1970年代にはナフタレンスルホン酸塩などの高い減水作用を利用した流動化剤が開発され，流動化コンクリートの普及とともに広く使用された。1980年代には流動化コンクリートの普及が進むにつれ，品質管理の所在，投入手間，現場の騒音問題等の対策としてプラントで添加でき，減水性が高く，保持性に優れた混和剤が望まれるようになり，高い減水性と良好なスランプ保持性を併せ持つ新しい化学混和剤として高性能AE減水剤が開発された。高性能AE減水剤は当初ナフタレン系，メラミン系，アミノスルホン酸系，ポリカルボン酸系等，成分系の異なる製品が混在していた。平成の時代になると，旧建設省の総プロ「鉄筋コンクリート造建築物の超軽量化·超高層化技術の開発(New RC)」や高流動コンクリートの研究開発をきっかけにさまざまな要求性能に合わせた改良が進められたが，その中でポリカルボン酸系高性能AE減水剤は，基本構造がポリエチレンオキシドをグラフト鎖として持つ高分子化合物であるため，主鎖，側鎖，分子量などを変化させることにより容易に分散性や流動保持性などの性質をコントロールできることから徐々に主流となっていった。その後もコンクリートの高機能化·高性能化に伴う様々な要求性能に応えるため，ポリ力ルボン酸系高性能AE減水剤の技術を応用した各種新製品が開発され現在に至っている。本稿では，平成以降に開発された化学混和剤として，(超)高強度コンクリート用の化学混和剤，収縮低減タイプの化学混和剤，増粘剤一液タイプの化学混和剤，スラグ高含有コンクリート用の化学混和剤，およびブリーディング低減タィプの化学混和剤を取り上げ，これらの概要とコンクリートに適用した場合の性能等について紹介する。