コンクリート構造物の複合劣化入門①環境作用に着目した塩害とASRの複合劣化

摘要

本稿は，学生や初心者向けに塩害とASRの複合劣化について解説を行う入門書となるものです。他方，塩害およびASRの単独劣化についても鋭意研究が進められておりますが，まだまだ議論がされている研究分野でもあります。コンクリートは，鉄筋等の鋼材とともに部材•構造物中において，ソリッド（固体）なものとしてその役割を果たし，鉄筋コンクリート部材•構造としての力学的性能を発揮します。耐久性に関しての側面では，コンクリートは，セメント水和物で骨材を結合したものであり，空隙（細孔）を満たす溶液（細孔溶液）は，外部からの各種物質とのやりとり（浸透，溶解，化学反応）を長い年数に亘り続けています。単独劣化における問題が複雑である一因として，いずれの劣化においても外部からの作用とその反応機構の結果としての発生•進行が極めて複雑となる点にあります。そのため，外部からの作用に対して反応がいかに生じるか否か，あるいは，その後の進行がいかなるものかを評価•予測し，さらにはそれに基づき対策を行うために解決すベき課題が残されていることとなります。