地盤中重金属類の吸着反応とその応用

摘要

地盤は，溶液や懸濁液がその中を動くことができる多孔質体であり，溶液などから分子や粒子を選択的に保持する高い吸着性を有する。そうした地盤中における重金属類の主な輸送メカニズムは，図-4.1に示すように①移流，②拡散，③分散，④吸着等が考えられる。地盤中での吸着は土粒子の表面に分子やイオンが付着する現象であり，吸着の程度は，濃度，汚染物質の特性，土壌の種類，pH,共存物質など多くの要因に依存し，時間と場所で変化する。重金属類は土壌中では比較的吸着の影響を受けやすい物質であり，吸着により溶液中の濃度減少と水の移動に対する移動の遅延を生じる。物質の移動の遅延は遅延係数で定義されており，移流，分散，拡散項にも影響を及ぼす。したがって，吸着反応は地盤中における重金属類の移動を考える際に重要な輸送メカニズムといえる。