小型魚類の適応的行動（視運動反応,群れ行動）の脳情報処理原理とその神経·分子的基盤の解明を目指して

摘要

私達はこうした小型魚類を用いて，その視運動反応を数理モデル化することで脳における情報処理様式を予測するとともに，特定の脳領域を活性抑制したトランスジェニック個体の行動変化を，モデルから予測した情報処理様式と比較することで，脳の分子的·神経的基盤と各情報処理過程との対応関係を解明できないかと考えている．さらに私達は小型魚類の群れ行動にも着目して研究を進めている．協調的な群れ行動を創発するための個々の個体の行動ルールについては，古くから数理工学の分野で解析がなされているが，群れ行動を創発するための脳機能についてはまったく不明である．私達は，小型魚類の視運動反応を応用することで，2個体間の相互作用を定量的に計測することができる実験系を確立した．本稿ではこれまでに私達がモデルを作成する上で足場にした小型魚類の視運動反応の特性について紹介するとともに，2個体間の相互作用についての一部の解析結果について紹介したい．