実務における数値解析技術の課題と留意点

摘要

地盤工学分野において，安全かつ経済的な設計•施工を行う上で数値解析技術は有益な手法であり，現在まで数多くの解析手法が提案されるとともに利用されてきている。ところで，地盤の問題を扱う場合，土は金属やコンクリート等の人工材料と異なり，同じ種類の土であっても条件によって特性が大きく異なる自然材料であり，各種数値解析を実施する上でこの点を考慮しておくことが重要である。現在，コンピュータ性能の著しい発達により，微小変形だけでなく崩壊に至るまでの大変形を解析できる時代となるとともに，数値解析が，知識を持った一部の専門家が独自に開発し利用していた時代から，地盤の複雑な問題に対応した商用ソフトが売り出される中，個人ベースでブラックボックス的に利用できる時代に移ってきている。しかし，数値解析をブラックボックス的に利用する場合であっても，実務においては，得られた結果が妥当なものとなっているかを適切に判断できる能力が求められる。そのため，数値解析を利用するにあたっては，自然材料である土の特性を理解した上で，数値解析に利用されている構成式，要素モデル，非線形解法等についての知識を持っておくことが必要である。このように現在数値解析は，データ入力により何らかの解を得ることが可能な時代となっているが，その得られた解が目的に対し適切な結果であるかの判断には，利用者の知識や経験に基づいた種々の判断が不可欠である。そこでここでは，実務において数値解析を利用する上での課題と留意点について述べる。