底質の安定同位体比を指標とした子吉川の水環境評価

摘要

秋田県の子吉川流域で底質の炭素および窒素の安定同位体比（δ~(13)C，δ~(15)N）と水質を調査し，流域の水質変化と窒素収支について述べた。子吉川では下流ほど有機汚濁が進んでいる（DOC:2.0mgC・l~(-1)から2.8mgC・l~(-1);NO_3~--N:0.22mg・l~(-1)から0.31mg・l~(-1)）と見なせたが，下流でのδ~(15)Nおよびδ~(13)Cがそれぞれ1.5‰，-26.3‰と小さいのに対し，上流ではそれぞれ3.2‰，-24.0‰であったことから，上流域に汚染源があり，また中流域での腐植質の流入によって下流に向けた安定同位体比の低下が生じていると推測された。底質のδ~(15)Nの季節変化からは水田に散布される肥料の影響が示唆された。水中からの窒素除去量をアンモニウム濃度と底質のδ~(15)Nから同位体分別分析によって求めたところ，一般的に水田に散布される量とほぼ同じ妥当な値が得られた。