ダム堆積砂を利用した三河湾における干潟•浅場の再生

摘要

三河湾では港湾整備等にともなう埋め立てにより，1957 年から1999年の間に35.7 km~2の面積が減少した。ま た，マクロベントス出現数が5種類未満で，懸濁物除去 機能がほとんど機能していない航路•泊地等の海域（デ ッドゾーン）は，三河湾の極沿岸域に27.8 km~2存在して おり,合わせて三河湾（面積582.5 km~2)の約11%が 消失もしくは機能を失っている。本来，干潟•浅場（ア マモ場を含む）は，二枚貝の成育場，魚介類稚仔魚の保 育場として機能しているが,消失等によりこれらの機能 が直接奪われると同時に，その場に生息する生物の摂餌 にともなう水質浄化機能が衰えることにより，全湾規模 で赤潮および貧酸素水塊の発生が拡大した。貧酸素水 塊は夏季の底生性魚介類の生息範囲を狭め，さらに生 まれてから干潟•浅場に着底するまでの浮遊期間の稚仔 魚を死滅させると指摘されている。このように，現在 の三河湾は魚介類が成育する海域として十分に機能を果 たしていない。その対策として水質総量削減にともなう 大幅な負荷量減少が実施されているが，貧酸水塊面積は 横ばいもしくは拡大傾向にあり,抑制効果はみられて いない。三河湾を多様な生物が生息する豊かな海とする ため，生物生産および水質浄化の機能を有する干潟·浅 場を保全•再生するなど，三河湾の環境修復に向けた取 り組み計画が提案され，一部実行に移されている。し かし，利用可能な海砂が少なくなり，干潟•浅場造成の ための砂の確保が難しくなつている。また，2014年以降， 主要な漁獲対象であり干潟•浅場を代表する生物である アサリの漁獲量が減少している。