第10部 三重県 列島縦断 産官学の未来像 意地と粘りでLiB受託開発を軌道へ 車載用を特許ビジネス化

摘要

平成の大合併で津市に編入された旧久居市は、枕草子で3名泉の1つに挙げられた榊原温泉を擁する歴史深い町である。その中心部である近鉄久居駅近くに、国内外の自動車メーカーと車載用リチウムイオン電池(LiB)の共同開発を行う受託開発ベンチャー、エス・イー・アイ㈱(三重県津市久居新町862-2、059-254-5151)がある。同社は、創業者で代表取締役の澤井岳彦氏が前身の会社で立ち上げた電池制御システムの開発部門が母体となっている。澤井氏はもともと半導体の設計技術者だったが、約20年前に半導体分野の限界とエネルギー分野へのシフトを予感して電池関連事業に乗り出した。その後、前身の会社が事業終息を決めたために独立し、1999年にエス・イー•アイを設立した。創業から一貫してLiB開発受託を手がけてきたが、順風満帆だったわけではない。電池事業として一本立ちできたのは3年前で、それまでは澤井氏が持つ半導体関連技術をべースとした電子部品設計や研究開発受託で下支えしてきた。そのため、創業以来赤字を出したことはないという。