温暖化がなければ2018年の猛暑はなかった

摘要

2017(平成29)年7月に九州北部を襲った豪雨，200名を超える犠牲者を出した平成30年7月豪雨と引き続く記録的な猛暑……，近年の異常気象の報告は後を絶たない。このような異常気象が発生すると，「この異常気象は地球温暖化のせいで起こったのですか」という質問が専門家の下に寄せられる。30年前はこんなに異常気象が騒がれることはめったになかった，最近は何かがおかしい，と何となく感じている読者は少なくないだろう。しかし，我々が何となく感じている地球の異常を地球温暖化のせいだと科学的に証明することは，簡単なようで実は容易ではない。なぜなら，30年に1度程度しか起こらない現象を気象庁は「異常気象」と定義しているのであるから，それは過去の観測データの中に数回しか記録されていないということであり，その数回の記録をもとに回数が増えているかどうかを議論することは不可能である。また，異常気象はたまたまその時その場所に発生した大気の「揺らぎ」が重なって初めて発生する。この偶然起こったものの中に温暖化の影響を見出すためには，次に述べるような工夫が必要になる。