絶滅の進化的救済条件

摘要

絶滅からの進化的救済は低速の環境変化が条件であると、ワシントン大のH•A•Lindsey博士らが報告している。(ネイチャー7438号)生物個体群の絶滅速度は、環境変化の速度が上昇する場合には加速すると予測されている。ストレスが高まるような条件に置かれた個体群が、現型に適切な可塑性を持たなかったり、より適した生息域に移動できなかったりする場合には、遺伝的変化が唯一の絶滅回避法になると考えられる。絶滅からの進化的救済が起こるのは、自然選択によって個体群内にストレス耐性の高い遺伝的変異体の数が増える場合である。幾つかの実験的研究から、環境変化の速度が遅いほど個体群の適応度が高まるか、もしくは絶滅が減少することが明らかにされている。しかし、進化的救済の基盤となる遺伝的変化は、これまでほとんど着目されてこなかった。