ネイチャー★ハイライト

摘要

·ゲノミクス：鐘状ピーカーがヨーロッパに広まった過程独特の文化遺物とMSがヨー口ッパに広まった過程をゲノム技術によってたどり、新石器時代と青銅器時代のヨーロッパ人の生活に関する知見を集めた2つの研究が発表された。古代人の文化は、当時の人工遺物によつて解明されることが多い。その1例である鐘状ビーカー複合（Bell Beaker Co mplex)は、定型化した鐘状ポット、銅製短剣、矢尻、石製のリストガード、独特な穴開きボタンなどの品の一群で、新石器時代末期の墓所と考えられる場所で発見された。鐘状ビーカー文化は、紀元前2750年に始まり、西ヨーロッパと中央ヨー口ッパの全体に広がったが、この拡散の原因が古代人の移動によるものか、文化の発生によるものか、その両者なのかという考古学上の論点に決着はついていない。David Reichらは、136力所の考古遺跡から出土した新石器時代、銅器時代、および青銅器時代のヨーロッパ人の遺体（400体）のゲノム全域のデータを解析した結果を示した。400体のうちの226体は、ビーカー形の物体と共に埋葬されており、遺伝的多様性が認められたとしている。この結果は、文化の伝達と古代人の移動が共に重要な役割を果たしており、これら2つのプ口セスの関わりの大小に地域差があるとするモデルの正当性が裏付けられている。また、一方の研究では、紀元前1万2000〜500年に生きていた225人のヨーロッパ人のゲノムを解析して、もう1つの文化的革新である農業が箱ヨーロッパに拡散した軌跡を明らかにした。農業は、紀元前7000年紀の中頃に東南ヨーロッパに定着したアナトリア出身の移住者がヨーロッパに持ち込んだことが判明した。この研究で、ヨーロッパ全土での農業の拡散に関連する遺伝的動態を調べて、東南ヨーロッパが、農業が到来した時期の前後に東西の人々の接触点として機能していたことを明らかにした。ただ、先住民と移住者の交流の程度には大きなぱらつきがあり、東南ヨーロッパを通って、北ヨー口ッパと西ヨー口ッパに移動した一部の初期の農民は、狩獬採集民との遺伝的相互作用が限定的だったが、その他の集団は、東南ヨー口ッパの地元の集団と広範に交配を行つていたことが、示された。