若手研究者奨励の凝縮系科学賞

摘要

内田助教は「スピンゼーベック効果の発見とスピン熱流物理の展開」で、実験部門での受賞となった。電子スピンの流れを用いて情報·エネルギーを伝達する"スピントロニクス"を実現するため、スピン流の生成•制御•検出法が近年盛んに研究されている。内田助教は、温度勾配をもつ強磁性金属に常磁性金属を接触させ、常磁性金属中の逆スピンホール効果を用いて、熱流がスピン流を生成する"スピンゼーベック効果"を発見した。さらに熱スピントロニクス効果とも呼ぶべき現象を電荷移動のない強磁性絶縁体•常磁性金属接合でも実証、音波によるスピン流生成にも成功した。スピンゼーベック効果を用いれば、ありふれた廃熱や振動によって駆動されるスピンデバイス(センサや磁気メモリ等)や発電素子を構築できる。注目すべきは、スピンゼーベック効果が絶縁体でも発現するということだ。金属•半導体のみで行われていた熱電技術を絶縁体に拡張できることから、熱電変換素子の候補材料や設置可能場所の大幅な拡大が期待できる。内田助教は現在、NECスマートエネルギー研究所と共にスピンゼーベック効果を甲いた新しいエネルギーデバノスの研究開発を進めている。