アブラムシの繁殖源ブフネラの役割解明

摘要

庭先の花が、いつの間にかアブラムシでいっぱいになっているといった光景はよく見かけることだが、この旺盛な繁殖力を支えているのが、栄養分を作ってアブラムシに提供する共生細菌"ブフネラ"だ。豊橋技術科学大学エレクトロニクス先端融合研究所の中鉢淳准教授は、理化学研究所、岩手医科大学、東京工業大学、国立遺伝学研究所と共同で、アブラムシが、細菌から獲得した遺伝子を使ってタンパク質を合成し、そのタンパク質をブフネラに運ぶ仕組みを進化させていることを明らかにすることに世界で初めて成功した。中鉢准教授によると「アブラムシの核ゲノムが、細菌から水平転移により複数のDNA断片を獲得していることが分かっていた。これらがタンパク質台成に用いられ、真に遺伝子として機能しているか確かめるベく、今回の解析を行った」という。そこで、アブラムシな細菌から獲得した遺伝子の一つで、機能の不明なタンパク質『RlpA4』に注目した。アブラムシのRNAを抽出し、RT-PCR法によりRlpA4遺伝子の配列を増幅した後、発現べクターへ挿入して大腸菌に導入し、Hisタグ(アミノ酸の一種ヒスチジンが数個連なったもの)融台タンパク質を合成した。このタンパク質をニッケルカラムを用いて精製し、さらに電気泳動法で分離した後、抗体作製に用いた。得られたRlpA4タンパク質抗体を精製後、イムノブロットに用いて、アブラムシの体組織にRlpA4タンパク質が含まれるかを調べた。その結果RlpA4タンパク質は、親虫自身の体腔内に存在する菌細胞から特異的に検出された。次に、同じ精製抗体を用いて免疫組織化学を行ったところ、やはりRlpA4タンパク質は、親虫自身の菌細胞のみから特異的に検出された。また、より高倍率での観察や共焦点レーザー顕微鏡による観察から、RlpA4タンパク質は、菌細胞内でブフネラの細胞に局在することが明らかとなった。