丸栄百貨店に込められた村野藤吾の建築精神

摘要

2018年6月30日、名古屋巿中区の栄地区にある老舗デパートの丸栄百貨店が、惜しまれつつ閉店した。その最後の3日間の様子は、NHKの人気番組「ドキュメント72時間」でも「さよなら！私の愛した百貨店」(2018年8月3日放送)と題して取り上げられ、多くの巿民に愛される身近な存在であったことが映像からも伝わってきた。この建物は、村野藤吾(1891～1984年)が設計を手がけ、最初の本館が1953年に竣工する。その後、1956年に西棟、村野没後の1986年に南棟が完成して現在の姿となり、それ以降、原型を良くとどめながら、65年の長きにわたって名古屋の戦後を見守ってきた。その意味からも、すでに街角の風景の一部となった建築である。今回の閉店は、業績の低迷と建物の老朽化、耐震強度不足などの理由からとされており、百貨店事業の幕を下ろし、近く解体工事が始まるという。