スタビライザーを用いたMTT夏期施工の実現に向けた理論的および実験的検証

摘要

JR西日本(以下、当社)ではマルチプルタイタンパ(以下、MTT)の老朽取替にあわせてスタビライザーュニットを組み込hだ新型MTTを導入した(写真①)1)。写真②に示すスタビラィザーは2つの偏心荷重を逆方向に回転させることで軌道の鉛直方向の振動を打ち消し、レール、まくらぎを介して軌間内外のバラストへまくらぎ方向の振動のみを伝え、初期沈下促進による軌道狂い進み抑制と道床横抵抗カを向上させる効果があるとされている2)。当社在来線では、レール張り出し防止の観点から6～9月の約4ヶ月弱もの期間を作業制限しており、スタビライザー作業によるバラスト安定化効果(以下、スタビ効果)によりこれを緩和することで大幅なMTT稼働率向上による配備台数を減ずることを目論hだ。MTTは線路保守の主要機械であるが、非常に高価で維持管理にも多大な費用を要することから、配備台数減はイニシャルおよびランニングの両面で非常に大きなコスト低減に繋がる。さらには、年間稼働率向上はMTTオペレーターや跡作業従事者の労働生産性向上にも大きく寄与する。一方で、レール張り出しは列車脱線リスクを伴うことから、制限緩和は安全確保を絶対とすべく現象の解明、理論的裏付けおよび検証を入念に取り組hできた。本稿では、模型試験や実機試験を通じて得られた各種条件下でのスタビ効果とFEM解析等による座屈安定性評価の一部を紹介する。