続•名峰へのプロローグ第32回筑波山を巡る鉄道車輌たち

摘要

標高1,000mにも満たないのに関東平野にピラミツドさながらの存在感たっぷりの山塊を神々しく見せてくれている山がある。筑波山（877m)だ。関東平野西端にあたる八高線•金子駅付近からも冬のよく晴れた日には80kmほどの距離を隔てて視認できるほどだった。周りに高い山がなく広大な関東平野に聳え立つという独立峰が幸いしたのだろう。見事な三角錐ゆえに成層火山だと見紛うが、地下深くのマグマが冷えて固まった斑れい岩や花崗岩が6千万年という長い年月に及ぶ地殻変動で隆起とともに浸食を繰り返し現在のような均整のとれた山容が形作られたと考えられる。山項部には「大仏岩」「ガマ石」といつた奇岩が多く点在し名残をとどめている。一等三角点のある女体山と男体山から山頂部が成る典型的な双耳峰で、見る位置によって二つの峰が背比べするように見えたり、重なって見えたり、はたまた離れて見えたり、二つのピークが織りなす妙が筑波山鑑賞の真骨頂だと思う。北アルプス鹿島槍ケ岳を小ぶりにした「ミニ鹿島槍」と言つたところか。