編集委員会だより

摘要

■2015年を迎えました.第四紀研究54卷1号をお届けします.今号は，論説1編，短報2編と講座(テフラ学)1編の4編を掲載いたしました.■徳安佳代子•田中和広会員による「現世河川堆積物によるOSL信号リセット—山口県錦川を例として—」は，現世河川堆積物中の石英粒子のOSL測定を行い，ブリーチングと呼ばれるOSL信号のリセットがどの程度行われているかを検討した論文です.第四紀の堆積物の年代を求めるために，約5万年前までであれば放射性炭素同位体を用いた年代測定法を用いることが可能ですが，数万〜10万年前程度の堆積物の年代を求める方法として，OSL年代測定法があります.このOSL年代測定では，鉱物粒子が運搬〜堆積の過程で太陽光を受けることによりOSL信号がリセットされることが，年代を求める基礎となります.しかし，粒子の運搬〜堆積過程でOSL信号がリセットされるのかは，年代値の信頼性を議論する上で重要な要素であり，これまでもさまざまな堆積環境で堆積した鉱物粒子についてOSL信号のリセットが検討されてきました.本論では，特に信号リセットに差異が大きいとされてきた河川堆積物について検討し.錦川の洪水による現世堆積物では完全に信号がリセットされていないことを明らかにしました.この残存した信号強度は，6-0.6kaに相当するという結果です.この結果から，河川堆積物の年代(段丘の形成年代など)をOSL測定法によって検討する際には，数万年程度の若い年代については大きな影響を及ぼす可能性がありますが，この誤差を考慮した上でより古い河成段丘等の年代を検討することが可能であることを示しています.