自由航走模型試験のための補助推力装置の開発

摘要

船舶の性能推定や船型開発などについて，縮尺模型を用いた水槽試験が行われる.このとき，模型船と実船の尺度影響による船体摩擦抵抗の違いで，水槽試験における模型プロぺラの作動点（荷重度）は実船と大きく異なる.曳航試験水槽で行われている一般的な自航試験では，抵抗試験装置で模型船を曳航する方法でプロぺラ荷重度を実船の自航状態に近いものにしている.一方，角水槽などで行われる自由航走模型試験は物理現象を直接計測できることに最大の利点があるが，模型船の運動が直線的でないこともありプロペラ荷重度の変更が試験技術的に難しく，現在各試験研究機関においては模型船の自航状態のまま試験を行っていると思われる.このことは，自由航走模型試験で行われる試験結果にはプロペラ荷重度の影響が表れることを意味する.例えば，操縦性能試験では実船の操縦運動が十分な精度を確保できていない場合も考えられる.このため実船の操縦性能推定では尺度影響を考慮したシミュレーション計算の手法がとられ，模型試験結果については計算における数学モデルの妥当性の確認のための役割を果たしている.また，波浪中の試験から実船の波浪中船速低下を求めたい場合も，模型船の自航状態で得られた結果がどの程度実船性能を表しているかは，十分検討して取り扱わなければならない.ここで自由航走模型試験についてもプロペラ荷重度を任意に変更することが可能ならば，実船状態における各種性能を直接実験から求められる有効な手段になり得る.