繊維強化ポリマー（FRP)のコンクリート構造物への適用に関する設計•施工指針について

摘要

RCおよびPC構造物においては，経年劣化や疲労などによる構造物の性能低下が顕在化しつつあり，既設コンクリート橋の更新や補修•補強がますます増大していくことが考えられる。しかしながら，塩化物イオンによる環境作用が大きい箇所や接合部などでは鋼材腐食が発生することが懸念されている。プレストレストコンクリート工学会では，「更新用プレキャストPC床版技術指針」において，鋼材位置での塩化物イオン濃度が高く鋼材が腐食するおそれがある構造物は，繊維強化ポリマー（FRP:Fiber Reinforced Polymer)を使用する必要があることを明記しており，この材料を使用する場合は，土木学会の「連続繊維補強材を用いたコンクリート構造物の設計·施工指針（案)」（コンクリートライブラリー第88号，1996年）を参照することとなっている。しかしながら，当該指針が発刊されてから20年以上経過していること，繊維強化ポリマーの研究開発•技術が当時から進展していることなどから，新たな知見を取り入れた指針を整備する必要性が増してきている。このような情勢に鑑み，本工学会では繊維メーカー5社からの委託を受け，「繊維強化ポリマーのコンクリート構造物への適用に関する委員会」を2017年に設置し，指針の作成活動を行ってきた。本指針は，24年前に刊行された土木学会の指針に基づいて，わが国および欧米の最新の研究成果および本工学会から刊行された「コンクリート構造技術規準-性能創造による設計•施工·保全-」を新たに取り入れたものである。本文は本指針の概要について述べるものである。